痛み止めと慢性腰痛

一般的によく処方される痛み止めを「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」と言います。

NSAIDsには、ロキソニン、ボルタレン、セレコックス、アスピリンなどの薬品名があります。

これらNSAIDsは、程度の差はあれ、発痛物質(プロスタグランジンE₂)の合成に必要な酵素(COX-1、COX-2)を阻害することが主な作用になります。

もう少し詳しく説明すると、細胞膜にあるリン脂質から、ホスホリパーゼA₂によりアラキドン酸が切り出されます。
次に、アラキドン酸は酵素(COX-2)にて、発痛物質(プロスタグランジンE₂)へと合成されていきます。

よく病院で、痛み止めを処方されると胃薬を一緒に処方されます。

これは、先ほど「COX-1」「COX-2」の2種類の酵素を阻害することが、NSAIDsの主な作用というお話をしましたが

COX-2を阻害すれば、発痛物質の合成を阻害することになり、鎮痛作用が期待できるのですが

COX-1は別名「ハウスキーピング型」とも言われており、消化管や腎臓、血小板などを保護する生体の維持に必要な酵素になりますので、これも阻害してしまうと、胃の調子が悪くなったりしてしまうので、胃薬が処方されるというわけなのです。

その中で、先ほど挙げた「セレコックス」はCOX-2のみを阻害できると言われており、現在、臨床でも使用されています。

NSADsは、慢性疼痛の中でも特に運動器疾患に使用することが強く推奨されています。

ただし!!

ここからが皆さんに知ってほしい事実なのですが

【腰痛】に関しては少し訳が違います。

腰痛診療ガイドラインでは

ぎっくり腰(急性腰痛)にはNSADsの使用を強く推奨されていますが

慢性腰痛に対するエビデンスは弱く、【使用することを弱く推奨する】となっています。

慢性痛の定義は

「3か月以上にわたって続く痛み」とあります。

つまり、3か月以上、腰痛で悩まれている方で、ロキソニンやボルタレン、あるいはロキソニンテープ、ボルタレンテープなどの湿布は

【使用することを弱く推奨する】ということになります。

当院にご来院される慢性腰痛の患者様の中にも

痛み止めを常用していたり、ロキソニンテープを張って皮膚がボロボロになっている方がおられます。

慢性腰痛の治療で1番エビデンスが高いとされているのは【運動療法】です。

投薬やブロック注射、鍼灸、牽引、電気治療よりも運動療法なのです。

慢性腰痛でお困りの方は、今一度、ご自身の対処法が合っているかどうか見直してみてください。